「だいじな本のみつけ方」(大崎梢)

本は多くの出会いと夢をもたらしてくれる

「だいじな本のみつけ方」
(大崎梢)光文社文庫

野々香は放課後の校舎で、
まだ書店に並んでいないはずの
文庫本を見つける。
大好きな作家・新木真琴の
発売前の新作がどうしてここに?
誰が読んでいるの?
本好きな仲間たちと
それを調べるうちに、
野々香は作家・新木
その人と出会う…。

本が好きな人と出会うと、
私はそれだけで嬉しくなってきます。
その人と
お近づきになりたいと思います。
できればさらに本について
語り合いたいとさえ思います。
本好きな人間は、
皆そうなのではないでしょうか。

野々香もそうした本好きな一人です。
誰かが忘れていった文庫本の
カバーをそっと開けて
中を確かめてみるくらいですから。
そこで見つけたのが
自分のお気に入りの作家の
発売前の新作です。
いても立ってもいられません。
いけすかない男子・秀臣の
力も借りながら謎解きに向かいます。

ミステリー的に始まる物語ですが、
謎解きはすぐに終わります。
新作本の持ち主は
作家の甥で同級生・浩一。
本作品は野々香、秀臣、浩一、
そして友達のルナたちが、
本をめぐって周囲の大人たちと
関わっていく物語です。

前半の「だいじな本のみつけ方」では、
中学生の手づくりPOPで
地元ゆめみ書店と
協力していく様子が描かれます。
そしてそれは作家・新木先生と
店員・青山さんの仲を結果的に
取り持つことにも繋がっていきます。

後半の「だいじな未来のみつけ方」では、
中学生が小学校に出向いて
読み聞かせ会やビブリオ・バトルを
行うまでが描かれます。
それは子ども向けの
朗読会をやめてしまった
元アナウンサー・ビトさんの
心を救っていくのです。

本好きな人間は、
どちらかというと控えめで、
人との関わりが苦手な人が
多いのではないかと思います
(私もそうですので)。
でも、ここに登場する
野々香と秀臣は二人とも活動的。
二人の思いと行動が、
次第に周囲の大人たちを
巻き込んでいく姿は爽快です。

最後の数行に野々香の、
本と人への思いが凝縮しています。
「作者の生み出した物語に
 多くの人が関わり、
 一冊の本になり、
 今、手の中にある。
 自分もいつか、
 物語に関わる一人になりたい。」

それは作者・大崎の
思いでもあるはずです。
本はその作品の中だけでなく、
現実の世界でも
多くの素敵な出会いと
大きく広がる夢を
私たちにもたらしてくれる。
そう素直に感じさせてくれる
一冊なのです。
この本を中学校1年生に
強く薦めたいと思います。

(2019.7.10)

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